高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは
脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血といった脳血管障害や交通事故などによる脳外傷、脳炎、低酸素脳症などで脳を損傷すると、物の覚えが悪くなった、集中力が続かなくなった、言葉を理解し話すことが出来なくなったなど今までみられなかった症状が現れることがあります。脳に損傷が起きると手が動かなくなり物を持つことが出来なくなる、足が動かなくなり歩くことが出来なくなるといった手足の運動麻痺を真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。
ところが実際には、物や空間を認識する力、目的をもった行為、意思を表現・伝達・理解する言語、時間の流れの中で欠かせない記憶、そして未来の展望と目的をもって計画的に行動する能力が障害されてしまうことがあります。高次脳機能障害の症状は様々でこれらの機能が障害されると日常生活に様々な支障が出てきてしまいます。
・易疲労性(いひろうせい)
精神的に疲れやすいことを指します。すぐに疲れてしまい起きていてもボーッとしていることが多くみられます。
・発動性の低下
自分から何かを始める、動く、発想することが出来ない状態の事を指します。
・脱抑制(だつよくせい)・易怒性(いどせい)
感情を適切にコントロールすることが困難な状況を指します。じっとしていられない、イライラしやすいといったことがみられます。
・注意障害
物事に集中し取り組むことが出来なくなり、注意散漫になりやすくなる状態を指します。
・失語症(しつごしょう)
他人の考えを理解したり、自分の考えを表現したりする事が困難な状態の事を指します。聞く、読む、話す、書くなどの言語機能がうまく働かなくなってしまいます。
・失行(しっこう)
日常よく使う道具、例えばスプーンや歯ブラシが上手く使えず、どのように使用するかわからなくなってしまう、動作の手順を間違うといった状態を指します。
・半側空間無視(はんそくくうかんむし)
視力には問題がないのに目の前の空間の半分(多くは左側)に気付きにくくなる状態を指します。食事や本を読んだりするときに無視側の食べ物や文字を見落としやすくなります。
・記憶障害
新しい情報を覚え、それを保持し、必要な時に引き出すことができない状態をさします。人の名前や作業の手順が覚えられない、さっき言った事を忘れてしまうといったことが多くみられます。
・遂行機能障害(すいこうきのうしょうがい)
考え、計画し、問題を解決し、行動する事が出来ない状態を指します。何を最初にして良いか優先順位がつけられない、一つ以上の考えが思いつかないといったことが多くみられます。
このように症状は多岐にわたり、人それぞれ異なるうえ、現われ方も様々です。まずは高次脳機能とその障害を理解することからリハビリテーションも始まっていきます。
作業療法士 中沢 宏彰