災害時の食事


 秋になり、脂ののったおいしい秋刀魚が出回るようになりました。秋刀魚には、EPA DHA といったn−3系多価不飽和脂肪酸といわれる成分が豊富に含まれています。EPA、DHA は悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールを下げる働きがあります。LDLコレステロールが高くなると動脈硬化が起こりやすくなり、心疾患や脳卒中などの原因となります。また、EPA、DHA には炎症を抑える働きもありますので、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など炎症が持続する方に有効な成分です。旬の秋刀魚を食べて元気に過ごしましょう。


 大災害時は持病を持っている方には過酷な状況になります。また、東日本大震災では避難所生活が長くなり、糖尿病や高血圧が悪化したという話も多く聞きました。いつもはできている食事療法や運動療法もできなくなります。何を注意すべきか前もって考えておきましょう。

●主食

 まず、もっとも配給されることが多いのがおにぎりや菓子パン、カップラーメンなどの主食です。糖尿病の方では炭水化物は血糖値が上がりやすい為、ゆっくり食べるといった工夫が必要です。カップラーメンは減塩のため汁を残したほうがよいのですが、避難所では下水道が復旧していない場合、カップ麺の残り汁を捨ててはいけないという規則があったようです。スープの素を全部使わずに作れば汁を飲み干しても塩分を減らすことができます。

●主菜

 肉や魚の缶詰など調理済みのものがよく配給されます。たんぱく質源として貴重ですが、塩分が多い食品が多いため、煮汁を残すなど減塩を心がけましょう。

●副菜

 食糧供給が安定するまでは生鮮野菜の確保は困難です。少量でも野菜、きのこ、海藻など食物繊維の多い食品を積極的にとるようにしましょう。

●果物

野菜同様、生果物も安定して確保が難しい食品です。缶詰の果物を食べる場合は糖尿病の方では特に甘いシロップは残すとよいでしょう。

●飲み物

 配給された飲み物の栄養成分や原材料を確認しましょう。野菜ジュースでも果汁が含まれているものは糖尿病の方は注意が必要です。

 脱水や便秘を防ぐため、できるだけこまめに水分を摂取しましょう。エコノミークラス症候群の予防にもなります(適度に身体を動かすことも必要です)。また、ゆっくりかんで食べること、塩分に注意することを心がけましょう。

 災害時に自宅で生活を続けるためには最低3日分の食料、水、生活用品が必要といわれています。(非常に広い範囲に被害が及ぶ南海トラフ巨大地震では、1 週間分の備蓄が望ましいと されています)日ごろから防災意識を持って生活していきましょう。


参考:NPO 法人 西東京臨床糖尿病研究会

『糖尿病災害時サバイバルマニュアル』より

管理栄養士 細田佳江

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